熊本×食器

熊本県には代表的な伝統工芸品「小代焼」「天草陶磁器」「高田焼」があります。

• 小代焼

  小代焼（しょうだいやき）は、熊本県北部で作られている焼き物です。
  1632年、豊前国の細川家が肥後国に転封となった際、同行した牝小路源七（ひんのこうじげんしち）、葛城八左衛門が小岱山（しょうだいさん）の麓で登り窯を築いたことから始まったとされています。
  肥後藩の御用窯として茶陶器が作られたほか多くの日用雑器も作られ、その技術は現代まで継承されてきました。
  鉄分を多く含む小代粘土で作られ、素朴で力強い作風が特徴です。
  釉薬の調合や焼成温度の具合によって、青小代、黄小代、白小代と色が分かれます。

• 天草陶磁器

  天草陶磁器とは、天草西海岸で採れる良質な陶石や陶土から作られる磁器や陶器の総称です。
  その始まりについては、記録によると1676年に内田皿山焼の磁器、1765年に水の平焼の陶器が作られていたことがわかっています。
  幕府の直轄地であった天草に藩窯は存在せず、村ごとの庄屋が各々に製陶したため、多種多様な陶磁器が生み出されてきました。
  濁りのない白さが美しい白磁や、釉薬を二重掛けした陶器など個性的な作品が揃い、国指定の伝統工芸品となっています。

• 高田焼

  高田焼（こうだやき）は、熊本県八代（やつしろ）市で作られる焼き物で、「八代焼」とも呼ばれています。
  1632年に豊前国の細川家が肥後国に国替えとなった際、同行の上野喜蔵（あがのきぞう）が八代郡高田村に窯を築いたのが始まりです。
  高田焼といえば、独特な象嵌文様（ぞうがんもんよう）が大きな特徴となっています。
  象嵌とは、粘土に模様を刻んでできた凹面に、異なる色の土を埋め込む技法です。
  江戸時代に細川藩の御用窯として作られていた上品な器は全国的にも有名になり、その技術は現在にも継承されています。

• 近重治太郎

  近重治太郎（ちかしげじたろう）は、小代焼の復興に努めた陶芸家です。
  1931年に熊本市健軍（たけみや）で健軍窯を開窯し、明治維新後に細川藩の庇護を失って衰退していた小代焼の復興を志しました。
  小代焼の製陶技術を習得し、小代の陶土を使って新たな趣向も加えた作陶に励んで数々の作品を生み出し、1944年に技術保存の指定、1976年に伝統工芸功労者の表彰を受けました。
  その技術は、現在も後継者によって受け継がれています。

• 岡部源四郎

  岡部源四郎は、明治時代から昭和初期にかけて作陶していた、天草陶磁器の一つである「水の平焼」の陶芸家です。
  水の平焼の五代目であり、海鼠釉（なまこゆう）という着色釉を研究して「赤海鼠釉」の開発に成功しました。
  1910年には日英博覧会に赤海鼠釉のコーヒーセットを出品し、銅賞を受賞した功績があります。
  この赤海鼠釉によって作風が確立し、現在まで続く水の平焼の特色となっています。

• 上野平

  上野平（あがのたいら）は、高田焼を代々受け継ぐ上野窯の十代目です。
  1928年に天皇陛下へ花瓶を献上、1971年に勲六等瑞宝章受賞という功績をもち、高田焼の名声をより高めたとされている人物です。
  その後、十一代目となる上野才助に受け継がれ、隠居していたのですが、1974年に84歳で逝去しました。
  現在の上野窯は十三代目が受け継ぎ、今も約400年続く高田焼の伝統を守っています。