長野×食器

長野県には代表的な伝統工芸品「高遠焼」「松代焼」「尾林焼」があります。

• 高遠焼

  高遠焼（たかとおやき）は、長野県高遠町（現伊那市）で誕生した陶器です。
  1812年、高遠城の城内に水を引くための土管を、美濃国の陶工を招いて焼いたことから始まり、その後は御庭焼となり日用雑器などが焼かれました。
  明治期以降は衰退し1945年に一旦閉窯となりましたが、1975年に再興を果たしました。
  高遠焼は赤土の粘土を原料とし、彩りを出すために釉薬を二重掛けした美しい色合いの作品が多く見られます。

• 松代焼

  松代焼（まつしろやき）は、長野県長野市松代で作られている陶器です。
  江戸時代の中期頃、産業振興の一環として七代目松代藩主、真田幸専（さなだゆきたか）の時代に誕生しました。
  藩だけでなく民間にも普及して栄えましたが、昭和初期には量産品に圧されて一時廃窯となります。
  現在の松代焼は1972年に復興されたもので、2014年には長野県指定の伝統工芸品となり、高い評価を得ています。
  松代焼は鉄分の多い松代の土を原料とし、天然素材から作られる釉薬を二重掛けにしているため、素朴な風合いと絶妙な色合いが特徴的です。
  

• 尾林焼

  尾林焼（おばやしやき）は、長野県飯田市龍江尾林で作られている焼き物です。
  飯田藩の御用窯であったとされ、狛犬の焼き物が1609年の作であることから、長野県で最古の焼き物であることがわかっています。
  その後しばらく途絶えていましたが、江戸時代後期の1851年に、瀬戸の陶工であった水野儀三郎が飯田藩に招かれ、現在の尾林焼が始まりました。
  日用雑器や産業用の陶器など、その時代の需要に合わせた焼き物の数々を作り、戦時中に窯業が衰退した後には、単なる日用雑器の域を超えた芸術性の高い作品が評価を受けています。

• 唐木米之助

  唐木米之助は、高遠焼を再興の第一人者となった陶芸家です。
  瀬戸で陶業を営んでいましたが、昭和中期より廃業していた高遠焼を復活させるべく高遠に帰り、1975年に町ぐるみで復興を果たしました。
  そして、1995年には高遠町勝間に「白山登窯（はくざんのぼりがま）」を築き、弟子の一人でもある孫の浦野真吾氏が、その伝統を受け継いでいます。

• 唐木田又三

  唐木田又三は、昭和初期から途絶えていた松代焼を復興させた陶芸家です。
  元々は美術教師であり、さまざまな研究の末に松代焼の伝統的な技法を復元させ、復興に至りました。
  1972年、長野市篠ノ井山に「唐木田窯」を築き、松代焼に加えて青磁やさび焼など多くの作品を遺しています。
  現在、二代目の唐木田伊三男氏や、唐木田窯以外の弟子たちにもその技術は継承されています。

• 水野英男

  水野英男は、尾林焼を再興させた陶芸家である水野氏の五代目です。
  瀬戸の陶芸家、岡部嶺男氏に師事して父祖伝来の技術を受け継ぎつつ、単なる日用雑器としての域を超える芸術性の高い作品を生み出し、尾林焼の発展に貢献しました。
  尾林の自然から得られる原料を使ったこだわりの作品は、工芸展などで多くの賞を受賞し、2006年には文部科学大臣から地域芸術文化功労者として表彰されました。
  2014年に82歳で逝去し、息子で六代目の水野雅史氏が伝統を継承しています。