大切にしてきた綿薩摩（綿さつま・薩摩絣）を手放そうと考えたとき、「価値が分からないまま安く買い取られてしまうのでは」と不安に思う方も多いのではないでしょうか。
綿薩摩は知る人ぞ知る高級木綿織物で、希少価値が高く、ものによっては数十万円という高額な買取価格がつくこともあります。しかし、その価値を正しく理解していないと、適正な価格で手放すことが難しくなってしまいます。
今回の記事では、綿薩摩を安心して査定に出せるよう、その基礎知識から、高価買取につながりやすいポイント、そして買取を成功させるための具体的なコツまで、詳しく解説します。
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目次
綿薩摩（綿さつま・薩摩絣）の買取に関する基礎知識
綿薩摩（めんさつま）とはどのような織物なのか、その特徴や歴史、価値を理解しておきましょう。
綿薩摩の基礎を知ることで、査定に不安を抱くことなく進むことができます。
- ・綿薩摩とは
- ・綿薩摩の特徴
- ・綿薩摩の歴史
- ・綿薩摩の価値
上記4項目に分けて、簡単に解説していきます。
綿薩摩とは
綿薩摩は宮崎県都城市を中心に生産される藍染めの木綿絣（かすり）の織物です。「綿さつま」「綿さつま絣」「薩摩絣」「薩摩木綿」など様々な呼称があります。
高品質の木綿織物で、絹のような光沢と滑らかさを持つことで知られています。
現在、この綿薩摩を生産しているのは都城市の「東郷織物（とうごうおりもの）」一軒のみです。
総称として薩摩木綿と呼ばれる中で、東郷織物では絣糸を使い手織りした最高級品を「薩摩絣」、機械織りのものを「綿さつま」と表示しています。
綿薩摩の特徴
綿薩摩には、木綿の中で最も細いとされる80番手の極細エジプト綿の双糸が主に用いられます。エジプト綿、特に「ギザ綿」は、細くて長く、天然の撚りと油分を含んでいるため、絹と見紛うほどの滑らかな肌触りとしっとりとした光沢を生み出すのが特徴です。「綿のダイヤモンド」とも称されます。
製作工程は大島紬に近く、「締機（しめばた）」を使った絣括りという技法と、熟練の職人による手織りによって行われます。しかし、木綿糸は絹糸に比べて滑りが悪く切れやすいため、織り上げるだけでも神経を使い、絣（かすり）を合わせるためにはこまめな調整が不可欠です。
一反を織り上げるのに半年から1年近くを要し、年間で80反ほどしか生産できないと言われています。
綿薩摩の歴史
綿薩摩の起源には諸説ありますが、1609年に薩摩藩主の島津義久が琉球に侵攻した際、琉球で織られた木綿絣が薩摩藩への献上品とされたことが始まりと伝えられています。
琉球で生産されたものが薩摩藩を介して流通したため、「薩摩絣」と名付けられました。江戸時代末期から明治時代にかけて、生産地が鹿児島県に移ります。
戦前までは庶民の普段着として高い人気を誇りましたが、戦後の服装の西洋化に伴う需要の激減や、鹿児島県の織物市場が大島紬に集中したことにより、木綿の薩摩絣は次第に衰退してしまいます。
伝統的な綿薩摩の衰退を危惧し、その存続と復興を目指したのが、永江明夫（ながえ あきお）氏でした。第二次世界大戦後、1947年に宮崎県都城市で「東郷織物」を創設し、15年以上の歳月をかけて薩摩絣を完成させ、再び脚光を浴びています。
綿薩摩の価値
綿薩摩は高級木綿としての品格が評価されています。前述の通り、年間に80反しか生産できず、その品質の高さと希少性から非常に価値のある織物とされています。
未使用品や状態の良いものは数万円から数十万円を超える金額で取引されることも珍しくありません。
希少性や職人技による丁寧な織りが評価されるため、コレクターや愛好家からの需要が根強い点も特徴的です。
なお、東郷織物では、手織りの最高級品を「薩摩絣」、機械織りのものを「綿さつま」と表示しており、機械織りの縞や格子柄の「綿さつま」は、手織りの薩摩絣に比べてリーズナブルな価格で取引されます。
綿薩摩（綿さつま・薩摩絣）の買取相場
需要や状態によって綿薩摩の買取価格は変動しますが、一般的な取引の目安やオークションでの傾向を把握しておきましょう。
基本的に、一般的な木綿着物の買取相場は数百円程度であるのに対し、綿薩摩の相場は2万円前後が基準になります。
特に薩摩絣に限定すると、買取相場は3万円から5万円とされており、未使用かつ極端に状態の良いものでは10万円以上の値が付くことも珍しくありません。
ちなみに、絣柄が細かいほど高く評価されます。例えば、亀甲柄の場合、80亀甲よりも100亀甲、100亀甲よりも160亀甲といったように、亀甲の数が多いほど高価格になります。
オークションサイトでは落札価格が幅広く、希少な柄や人気のある織元作品は一気に高値になることがあります。過去には39万円で落札された事例もあります。
一方、保存状態の悪い品や付属品が欠けた場合は査定が下がりやすく、相場の中心価格より低めになってしまうかもしれません。
※相場は目安であり、買取価格をお約束するものではございません。
高価買取につながりやすい綿薩摩（綿さつま・薩摩絣）の特徴
綿薩摩はその品質の高さと希少性から、買取市場でも非常に高く評価されます。
そのなかでも高価買取に繋がりやすいものには、以下4つの特徴があります。
- ・保存状態の良い作品
- ・箱や証紙などの付属品が揃っている作品
- ・サイズの大きい作品
- ・有名作家の作品
それぞれ、簡単に解説します。
保存状態の良い作品
綿薩摩の買取において、保存状態の良さは買取価格に大きく影響します。綿薩摩は木綿特有の耐久性があるとはいえ、シミ、シワ、虫食い跡、黄ばみ、カビなどの影響は受けてしまいます。
保管環境が良く、目立つ汚れや変色が見られないものほど、高い価値が認められやすいです。
着用後に汚れを落とし、湿気がたまらないように定期的に虫干しを行うなど、日頃からの適切なお手入れが重要です。たとう紙に包んで保管し、着物を詰め込みすぎないようにすることもシワや型崩れの防止に役立ちます。
また、着物は着用していなくても経年劣化するため、手放すことを検討するなら早めの方がおすすめです。
箱や証紙などの付属品が揃っている作品
綿薩摩の真贋や正規ルートでの生産であることを証明するため、証紙やメーカー発行の資料があると有利に働きます。
東郷織物製の証紙には「正藍染（化学染料を一切使わず、天然の藍だけで染めたという意味）」と書かれていることがあります。
また、綿薩摩の発明者である永江明夫氏の作品には、「永江明夫」という縦書きのサインと、文豪・武者小路実篤が贈った「薩摩絣 手織絣 誠実無比 実篤」という言葉が記された証紙が加わります。
さらに元箱や保管袋などの付属品も揃っていると、コレクターにとっての価値がさらに高まります。
サイズの大きい作品
綿薩摩に限らず、着物の買取市場では身丈が160cm以上の比較的大きいサイズの作品が高く評価されやすい傾向にあります。
幅や長さにゆとりがある綿薩摩であれば、仕立て直しや加工の自由度が高いというメリットがあるためです。
もちろん、生地自体にも大きな価値があるため、なるべく大きなサイズの方が高額査定につながります。
有名作家の作品
綿薩摩の復興と発展に大きく貢献した永江明夫氏の作品は、特に高く売れる傾向にあります。
これらの作品は仕上がりの質が安定しているだけでなく、永江氏の情熱と試行錯誤の末に生まれたという歴史性、文化性も加味されてコレクターズアイテムとしての需要が高いです。
また、大島紬の著名な作家である都喜ヱ門（ときえもん）が手掛けた薩摩絣は、めったにない「超希少」な作品とされており、驚くほどの高値がつく可能性があります。
綿薩摩（綿さつま・薩摩絣）を少しでも高く売るコツ
綿薩摩を少しでも高く買い取ってもらうためには、以下7つのコツを押さえることが重要です。
- ・査定士に必ず証紙を見せる
- ・査定前に簡単なお手入れをする
- ・無理なクリーニングは行わない
- ・付属品はまとめ売りする
- ・買取キャンペーンを利用する
- ・綿薩摩に詳しい買取業者に依頼する
- ・出張買取を利用する
適正価格で取り引きするため、順番に見ていきましょう。
査定士に必ず証紙を見せる
証紙はその品物が正規の綿薩摩であることを示す重要な資料です。
宮崎県都城市の「東郷織物」は、現在唯一綿薩摩を生産している工房です。その証紙には「正藍染」（化学染料を一切使わず、天然の藍だけで染めたという意味）と書かれていることがあります。
また、「永江明夫」氏の作品には、縦書きのサインが記された証紙が付属していることがあります。
証紙は通常、反物から着物に仕立てた際に出てくる生地の切れ端に付けられています。証紙を提示することで査定額が向上するため、必ず提示するようにしましょう。
査定前に簡単なお手入れをする
買取に出す綿薩摩は、できるだけ綺麗な状態である方が高価買取につながりやすいです。
ホコリや軽い汚れを柔らかいブラシや布で落とす程度なら、生地を傷めるリスクも少ないです。
また、着物にシワが寄っていたり、においが付いていたりする場合は、査定前に取り除いておくと良いでしょう。
無理なクリーニングは行わない
「買取額アップのために、できる限りお手入れをしてから査定に出そう」と考える方も多いですが、ご自宅での無理な手入れや、高額な専門クリーニングは避けるべきです。
薩摩絣は木綿でありながら非常に繊細な織物であり、基本的には自宅での丸洗いは不可です。自宅での洗浄や漂白などを行うと、生地の風合いを損なう可能性があります。
一方、専門業者による洗い張り（着物を反物の状態に戻して洗う方法）は着物を綺麗にしますが、その費用が査定額の上昇分を上回ってしまうケースも少なくありません。
汚れている綿薩摩であっても、まずはやわらかい布でホコリを優しく払う程度に留め、そのままの状態で査定に出すのも選択肢の一つです。
付属品はまとめ売りする
綿薩摩一点だけでなく、他の着物や帯、着付けに関連するアイテム、草履、バッグなど、複数の品物をまとめて売却することをおすすめします。
買取業者にとって、まとめて買い取れる方が輸送や査定などのコストを削減できるため、その分、買取金額を上乗せしやすいのです。不要になった着物関連の品がないか、確認してみましょう。
一見余分な品だと思われがちな小物も、買取価値をプラスにする要素になり得るので相談してみましょう。
買取キャンペーンを利用する
買取店や呉服店では、定期的に査定額アップのキャンペーンを実施していることがあります。
出張買取のキャンペーン、まとめ売りのキャンペーンなどにタイミングを合わせて査定を依頼すれば、通常よりも高い価格で売却できる可能性が高まるでしょう。
公式サイトやSNSなどで開催時期をチェックしてみるのがおすすめです。
綿薩摩に詳しい買取業者に依頼する
綿薩摩は、その素材（極細のエジプト綿）、製法（大島紬の絣技術の応用）、歴史的背景など、価値を判断する要素が非常に多い織物です。
織物の特性や産地、作家名などの豊富な知識を持つ業者であれば、綿薩摩の真価を正確に評価してくれるでしょう。
その一方、幅広いジャンルを扱う総合リサイクルショップなどでは、着物に特化した知識や査定技術を持った査定士がいない場合が多く、本来の価値よりも安価で買い取られてしまう恐れがあります。
着物の鑑定実績や口コミをチェックして、信頼性の高い業者を選ぶことが重要です。
出張買取を利用する
大きな反物や点数が多い場合、宅配買取での包装や移送は手間がかかります。
また、運ぶ際に大事な綿薩摩を傷つけてしまうリスクもあります。
出張買取を依頼すれば、自宅で手軽に査定を受けられ、輸送中のトラブルを避けられます。
時間やコストを節約しつつも、専門業者の知見をその場で教えてもらえるため、便利かつ安心です。
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まとめ
今回の記事では、綿薩摩（綿さつま・薩摩絣）の特徴や歴史、買取相場、さらに高価買取のために押さえておきたいポイントについて解説してきました。
綿薩摩は、絹と見紛うほどの滑らかな質感と光沢を持つ、非常に希少な高級木綿織物です。年間わずか80反ほどしか生産されないため、その希少性と職人の技術から、買取市場でも数万円から数十万円の高い価値が認められています。
また、買取の際には保存状態の良さ、証紙や付属品の有無、有名作家の作品といった条件が査定価格に影響します。
査定前のお手入れや信頼できる専門業者の選択も重要です。
ご自身では価値がわからないものでも、専門家に見てもらうことで正しい価値が明らかになります。まずはお気軽にお問い合わせいただき、あなたの綿薩摩の価値を確かめてみましょう。
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