着物の「紋」にはどんな種類がある?紋の意味や数の違いなども解説
着物の紋には「家紋」や「通し紋」があり、留袖などの礼装に施されます。
この記事では、紋の種類や入れる数による格式の違いなどについてわかりやすく解説します!
着物の紋とは?
紋には「家紋」「通し紋」「女紋」の3種類があります。
また、着物の格式によって、入れる紋の数は「五つ紋」「三つ紋」「一つ紋」と違います。
さらに、着物へ入れる際の刺繍の違いによって「日向紋」「中影紋」「陰紋」「縫紋」と格式が変わります。
このように、着物の紋は奥が深く種類や形式もさまざまです。以下では紋の種類ごとに詳しく解説します。
着物の紋の種類
まずは、紋にはどのような種類があるのか解説します。
家系を表す家紋(かもん)
「家紋」は家柄を表すシンボルのようなもので、現在使用されているものだけでも数百種類以上あります。
その歴史は古く、平安時代は貴族の間で、江戸時代は武士の間で広まり、その名残から明治時代以降は礼服に家紋を施すようになったと言われています。
特に有名な家紋は、天皇家の家紋である「菊の紋章」や、水戸黄門も印籠に描かれた「三つ葉葵」ではないでしょうか。
家紋は着物だけでなく、屋根瓦やお墓、調度品などに使われることもあります。
女性に受け継がれる女紋(めもん)
引用:https://older.minpaku.ac.jp/museum/showcase/fieldnews/shigotoba/kondo/wp09
「女紋」は、祖母から母、母から娘のように女性の間で継承される紋です。
地域によって女紋の風習はさまざまですが、主に関西で発展したと言われています。
女紋は、梅や蔦(つた)、桔梗(ききょう)など女性らしく優しいデザインが特徴です。
誰でも使用できる「通し紋」(とおしもん)
引用:https://www.hareginomarusho.co.jp/contents/tomesode/1258/
近年は「家紋」や「女紋」を使う機会が減り、自分の紋がわからないという人も増えています。
そのような場合に、誰でも使用できるのが「通し紋」で、「通紋(つうもん)」と呼ばれることもあります。
通し紋は着る人を選ばないため、レンタル着物にもよく用いられています。
着物の格式が高いほど紋の数が増える
着物に紋を入れる際は、着物の格式によって紋の数が変わることも考慮しておきましょう。
紋の数は多いほど格式は高くなります。
そのため、シーンに合った紋付きの着物を着用しなければ、マナー違反になるため注意が必要です。
紋の数によって異なる特徴と、着用すべき場面を以下で解説します。
幅広い用途に使える「一つ紋」
「一つ紋」は格式的には最も低いですが、幅広い用途に使えるのがメリットです。
紋を入れる場所は背中で、「背紋」とも呼ばれます。
一つ紋は、主に準礼装などで用いられます。
準礼装とは、礼装に次ぐ格式で、礼装ほどの正式な装いではないものの、あらたまった場面でも着用できる着物です。
例としては、「訪問着」や「色無地」、「江戸小紋」などが挙げられます。
これらは幅広い場面で着用可能な着物のため、一つ紋の着物は最も着用する機会が多いと言えるでしょう。
一つ紋より格式の高い「三つ紋」
「三つ紋」は一つ紋よりも格式が高く、準礼装や準礼装より格上の着物などに用いられます。
準礼装より格上の着物としては、「色留袖」などが代表的です。
色留袖は五つ紋と三つ紋のどちらかを選ぶことができるので、その場に応じて使い分けましょう。
紋を入れる位置は、背中と両袖で、両袖に入れる紋のことを「袖紋」と言います。
最も格式の高い「五つ紋」
「五つ紋」は最も格式の高いもので、礼装などに用いられます。
礼装とは、最もフォーマルな着物で、結婚式などの式典で多く見られます。
男性の礼装でおなじみの「黒紋付き」などは、五つ紋の中では代表的な着物と言えるでしょう。
女性の場合「黒留袖」や「色留袖」、「喪服」に入れることができます。
なかでも「黒留袖」と「喪服」は、五つ紋で入れることが必須とされています。
五つ紋の入れ方は、「染め抜きの日向紋」が基本です。
紋の位置は、背紋と袖紋に加えて左右の胸に1つずつ紋を入れます。
胸の位置に入れる紋は「抱き紋」と呼ばれます。
着物の紋の入れ方(技法)の種類
紋の入れ方は5種類に分けられ、格式の高い順に並べると
・日向紋
・中影紋
・陰紋
・縫い紋
・貼り紋
となります。
日向紋(ひなたもん)
引用:https://store.shopping.yahoo.co.jp/lapis/pl-0608.html#
日向紋とは「陽紋」とも呼ばれ、モチーフ全体を白抜きにしたものです。
日向紋は陰紋よりも格式の高い表現方法として使われます。
男性の礼装である「黒紋付き」や女性の礼装の「黒留袖」、三つ紋以上の「色留袖」は必ず日向紋でなければなりません。
中陰紋(ちゅうかげもん)
引用:https://irohakamon.com/kamon/ume/chuukageyaeume.html
陰紋より太い線で紋を表す中陰紋は、日向紋と陰紋の中間にあたる紋です。
準正式の場など、日向紋では大げさすぎる場合に用いられます。
陰紋(かげもん)
引用:https://irohakamon.com/kamon/ume/kageyaeume.html
陰紋とは、紋の輪郭部分のみを細い線でなぞって表現したものです。
略礼装である、「色無地」や「小紋」、「訪問着」にはよく陰紋が使用されます。
日向紋・中陰紋・陰紋は最高格式の「染め抜き紋」
引用:https://arai-takumi.com/mon.html
日向紋・中陰紋・陰紋は「染め抜き紋」と呼ばれ、縫い紋や貼り紋より格式が高くなります。
染め抜き紋はその名の通り、家紋を白く染め抜く技法です。
白生地を染める際に、紋の部分だけ染まらないよう残し、あとで中に柄を描き入れるという高度な技術です。
反物の時点で手が入るため、染め抜き紋はオーダーメイドの証とも言えるでしょう。
縫い紋(ぬいもん)
引用:https://arai-takumi.com/mon.html
「縫い紋」は刺繍で縫い付ける紋です。
染め抜き紋と比べると若干カジュアルな印象になるため、礼装などに使われることはほぼありません。
また、縫い紋は紋の色を自由に決めることができる技法です。
縫い紋は線で紋を表現するため、結果的に陰紋として分類されます。
手軽に紋の付け替えが可能な「貼り紋」
引用:https://harimon.easy-myshop.jp/c-item-detail?ic=CH0001
「貼り紋」は、紋を染めたり描いたりした生地を着物に貼り付ける技法です。
現代でいうワッペンやアップリケなどが当てはまります。
複数回貼り替えできるシール状のものや、アイロンの熱でしっかりと貼り付けるタイプなどがあり、手軽に家紋を付け替えられます。
レンタルや借りもので、違う家紋しかなかった場合や返却が必要な際に便利です。
しかし、貼り紋も縫い紋と同様にカジュアルな印象を与えるため、礼装などのフォーマルな装いには不適切です。
まとめ
着物の紋の種類についておわかりいただけたでしょうか。
家紋は家のシンボルであるだけでなく、格式を示すためにも用いられています。
家系の歴史や、家紋付きの着物のマナーなど知っておいて損はありません。
家の家紋をご存じでない方は、この機会に調べてみてはいかがでしょうか。
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