「たとう紙」って何?着物の保管や収納に必要な「たとう紙」の役割や選び方について解説
「たとう紙(たとうし)」は一般的にはあまりなじみのない言葉かもしれません。
たとう紙には着物を保管する際に包むための紙で、さまざまな役割があります。
ここでは、たとう紙について分かりやすく解説します。
たとう紙とは
着物を保管するときに包む紙
たとう紙は着物を包むために使用する紙のことを指します。
着物を収納や保管する際はこの「たとう紙」の存在が必要不可欠です。
そもそも、紙で物を包むという文化は平安時代にさかのぼると言います。
当時は着物を包むことはもちろん、贈り物の際も紙に包んで贈ったそうです。
そんな紙にものを包む文化が、今もなお「たとう紙」として残っています。
着物を包む以外の使い方
たとう紙は着物を包む以外にも使い方があります。
懐紙(かいし)として
懐紙とは現在のティッシュペーパーです。
着物の懐に入れていたことからそう呼ばれました。
昆虫採集のために
たとう紙は通気性がよいため、昆虫採集の際に昆虫の保存や管理に使われていました。
神道の装飾品として
神道では神主や巫女が、装飾品として催事で使用することがあります。
衣装敷(いしょうじき)として
衣装敷きとは、着物を着替える際に下にひいておく紙を指します。
京都では、たとう紙はどちらかというと衣装敷としての役割が一般的です。
たとう紙のさまざまな名称
たとう紙は地域によってさまざまな名称があります。
・「文庫紙(ぶんこし)」 ・ 「きもの文庫(ぶんこ)」 ・ 「4つ手」 ・ 「たとう」 |
「たとうし」の漢字の書き方も地域ごとの違いがあるようです。
具体例としては以下の通りです。
・「畳紙」 ・「帖紙」 ・「多当紙」 |
同じものを表すのにも関わらず、違う名称や漢字を用いるのは面白いですね。
もし興味があればご自分の地域での「たとうし」の書き方や呼ばれ方も調べてみてはいかがでしょうか。
たとう紙の役割
着物の保管に際に、たとう紙を用いることにはさまざまなメリットがあります。
それぞれ解説するので参考にしてみてください。
カビ対策
たとう紙は紙でできているため、湿気を吸う性質を持っています。
そのため、たとう紙を使うことでカビが発生しにくくなるでしょう。
また、着物は水分に弱く湿気を含んだ状態で放置しておくと、傷みや色あせの原因にもなるため、たとう紙はそういったトラブルからも守ってくれます。
ホコリを避ける
ホコリが付着したまま長期間放っておくことで、シミができてしまうことがあります。
ですのであらかじめ、たとう紙で着物を包み、ホコリから守っておくとよいでしょう。
また、ホコリは虫食いの原因ともなるヒメマルカツオブシムシの餌となり、大量発生を招く可能性があります。
虫食いの対策としてもたとう紙の存在は一役買ってくれるでしょう。
シワを防ぐ
紙の表面がざらざらな素材のため、たとう紙で包んで保管しておくと中の着物が崩れることが少なくなります。
着物が崩れてしまうとシワの原因にもなるため、あらかじめたとう紙で包んで着物のシワを防ぎましょう。
たとう紙の状態には注意
たとう紙が湿気などを含んでいる場合は交換が必要です。
もし湿気を含んだ状態で着物を包んでしまうとたとう紙そのものが着物のカビの原因になるので注意しましょう。
また、たとう紙は湿気を含みすぎて変色することもあります。
変色したたとうし紙は着物に色を移してしまうため、変色を見つけた場合は早めに交換しましょう。
最悪の場合はクリーニングでもシミが取れない場合があります。
たとう紙の選び方
引用:お祝いの着物
https://oiwai-kimono.com/teire-syuunou/knowledge_kimono-syuunou-tatoushi.html
ここからはたとう紙の選び方について解説します。
たとう紙のサイズ
たとう紙のサイズは着物の種類によって使い分けるのが一般的です。
主なサイズは以下の通りです。
・特大サイズ(およそ87cm) ・ 2つ折りサイズ(およそ83cm) ・ 3つ折りサイズ(およそ64cm) ・3つ折り小サイズ(およそ55cm) ・4つ折りサイズ(およそ48cm) |
着物の大きさによって使い分けましょう。
たとう紙は和紙か洋紙どちらがよい?
たとう紙には和紙と洋紙の2種類が存在します。
どちらもメリットがあるので自分に合ったものを選択しましょう。
和紙
和紙の主な原料は以下の3つです。
・楮(こうぞ) ・雁皮(がんぴ) ・三椏(みつまた) |
3つとも長い繊維なのが特徴で、繊維同士が結びつきやすいため、保存性に優れています。
洋紙
原料にはパルプが使われています。
パルプは植物や木材の繊維を抽出し、薬品によって繊維を結合させたものです。
印刷用の紙として用いられることが多く、安価で製造できます。
しかし、薬品による結合のため繊維がほどけやすく、劣化が早いのも特徴です。
たとう紙として使うなら?
着物を大切に着るためには、たとう紙に和紙を用いるのがよいでしょう。
その理由の1つは材質です。
和紙は表面がざらざらとした素材のため、包んでいる間に着物が滑りにくいという性質があります。
表面が滑りやすいと中で着物が崩れてシワになるのでざらざらとした和紙の方がたとう紙にはよいでしょう。
また、洋紙よりも和紙の方が長持ちするのも和紙がたとう紙に向いている理由です。
洋紙に使われるパルプは長期間経つと繊維がほどけ劣化するため、繊維の結びつきが強い和紙のほうが長持ちします。
ただし、洋紙の方が安価なため、何度も交換する場合は洋紙のたとう紙もおすすめです。
たとう紙の紙質と値段
たとう紙は紙の質によって値段が変わります。
紙の性質と値段を比較したうえでたとう紙を選ぶとよいでしょう。
紙質の特徴と値段の例は以下の通りです。
厚口和紙
厚口和紙は吸湿性や耐久性に優れており、たとう紙の中ではかなり優秀な紙質です。
1枚あたりのお値段は1000~4000円と高価なものが多いですが、着物の保管には適しています。
厚口和紙のたとう紙は高価な着物を包む際に使用するとよいでしょう。
中性紙
中性紙のたとう紙は耐久性も高く通気性にも優れています。
値段も500円前後と、和紙に比べると安価で済むため値段を抑えたい方にはおすすめです。
しかし、和紙ほどの吸湿性はないため、除湿剤で補う必要があります。
クラフト紙
クラフト紙のたとう紙は1枚あたり100~200円と安くで購入できるため、気軽に交換できるのが魅力です。
しかしながら、他の紙に比べて吸湿性は劣るため、除湿剤のなどの湿度対策をする必要があります。
普段使いの着物を収納するときはよいですが、特別な席で着るような高価な着物には使用は控えた方がよいでしょう。
たとう紙を買える場所
たとう紙は一定以上の湿気を吸うとそれ以上吸えなくなり、変色して着物に色移りしてしまうため、定期的に交換が必要です。
そんなときにどこでたとう紙を購入するか迷う方もおられると思うので、ここではたとう紙を買える場所について解説します。
呉服屋
呉服屋はたとう紙の購入も可能です。
店内に知識のあるスタッフが在籍しているため、必要に応じた選び方を提案してくれるでしょう。
呉服屋での購入はたとう紙選びの失敗が少ないためおすすめです。
着物クリーニング店
着物クリーニング店でもたとう紙を販売している場合があります。
着物をクリーニングに出したタイミングで新しいたとう紙と交換できるため、利用してみてはいかがでしょうか。
たとう紙の販売は店舗によってやっていない場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
ネット販売
たとう紙はインターネット上でも購入することができます。
インターネット上にはさまざまなサイトがあり、必要に応じた商品を気軽に購入できるのが魅力です。
種類が多すぎて選ぶのが難しい場合も、商品のレビューやネットショップごとのランキングを参考にすることができます。
わざわざ外出してたとう紙を買いに行くのが面倒なときは、インターネット販売を利用するのがよいでしょう。
以下のサイトを参考にしてみてください。
たとう紙を扱う注意点
たとう紙を扱う際は以下のことに注意しましょう。
薄紙は外そう
たとう紙を買った際には内側に薄い紙が付いています。
これはただの包装紙なので、着物を包む際は外しておきましょう。
薄紙に付いた糊が害虫を引き寄せてしまう可能性があります。
たとう紙の状態をチェックしよう
包むたとう紙が湿っていては、着物の湿気を取り除くことが出来ません。
まだ1度も着ていない着物にカビが生えてる場合はたとう紙に問題があります。
茶色く変色している場合や、斑点のようなシミができていれば交換の合図です。
また、取り替えた時期を覚えておくと、次の交換の日にちの目安になります。
たとう紙は定期的に陰干ししよう
たとう紙は一定以上の湿気を含むと使えなくなります。
なのでたとう紙は定期的に陰干しすることが必要です。
陰干しの仕方は、日光の当たらない風通しのよい場所に干しておきます。
たとう紙を結ぶ紐に注意
たとう紙を結ぶ紐には「リボン紐」と「紙縒り(こより)」の2種類がありますが、紙縒りは固い材質のため注意が必要です。
強く結んでしまうと、着物に跡がついてしまう可能性があります。
さらに着物の保管の質を上げるなら
収納の際にはたとう紙の存在が必要不可欠でしたが、さらに保管の質を上げるには以下のものも取り入れるとよいでしょう。
除湿剤
除湿剤を収納スペースの中に入れておくことで、着物の湿気を取り除くことができます。
湿度の高い梅雨の時期などは必須のアイテムともいえるでしょう。
ただし、除湿剤には使用期限があります。
期限を過ぎた状態で放置すると、逆に湿気を含むため注意が必要です。
防虫剤
防虫剤を使用することで着物が虫食いの被害にあうことを食い止めることができます。
しかし、防虫剤として使われる樟脳(しょうのう)やナフタリンは臭いが強いため、着物に臭いが付くのが嫌な方にはおすすめ出来ません。
その場合は無臭タイプの防虫剤を選ぶとよいでしょう。
おすすめなのは備長炭シート
着物を収納する際にもっとも適しているのが備長炭シートです。
備長炭シートは以下の点で優れています。
調湿性
調湿性とは湿度を一定に保つという働きです。
備長炭シートを収納スペースの下に貼っておけば、着物の最適な湿度(50~60%)に保ってくれるでしょう。
防虫・抗菌効果
また、備長炭シートにはアルカリ化という効果があり、酸化した場所を好む害虫や雑菌などを防虫・抗菌することができます。
消臭効果
備長炭の持つ性質として、臭いを消す効果もあります。
カビ臭さなどはもちろん、汗やタバコ、食事の臭いなども消してくれるためおすすめです。
持続効果が半永久的
1度備長炭シートを収納スペースに貼っておけば効果は半永久的に持続します。
手入れの必要もないため手軽に導入できるでしょう。
タンスの段ごとに1枚ずつ入れておけば安心です。
手ごろな価格設定
備長炭シートは値段も手ごろで、1,000円~2,000円の間で購入が可能です。
1枚買っておけば効果も半永久的なので、とてもコストパフォーマンスに優れています。
まとめ
ここではたとう紙の意味や役割、種類の選び方について解説しました。
たとう紙は着物の種類によってサイズを変える必要があり、その紙質や値段もさまざまなので、お悩みの際はこの記事を参考にたとう紙を選ぶとよいでしょう。
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