岐阜×食器

岐阜県には代表的な伝統工芸品「美濃焼」「小糸焼」「渋草焼」があります。

• 美濃焼

  美濃焼は、日本一の陶磁器生産量を誇る岐阜県東濃地方で作られている焼き物です。
  その歴史は古く、約1300年前にまで遡り、古墳時代後期に須恵器が焼かれたことから始まりました。
  長い歴史を経てさまざまな様式の焼き物が登場し、安土・桃山時代の「瀬戸黒」「黄瀬戸」「志野」や、江戸時代初期の「織部」「御深井（おふけ）」などは美濃焼を代表する存在として、多くの愛好家を魅了しています。
  美濃焼の作家には人間国宝に認定された陶芸家も存在し、高価買取の可能性があります。

• 小糸焼

  小糸焼（こいとやき）は、岐阜県高山市小糸坂で誕生した焼き物です。
  1620年代、高山城主の金森重頼が、京都の陶工を招いて茶器を焼かせたことから始まりました。
  その後、初期小糸焼は廃窯し、1836年に第二期小糸焼として復興しますが、わずか5年ほどで廃窯となります。
  現在の第三期小糸焼は、戦後に長倉三朗が復興させたものです。
  「伊羅保釉（いらぼゆう）」という伝統的な釉薬から作られた青、茶、うぐいす色の釉薬を使った独特な渋い味わいのある作品を中心に展開し、1992年には岐阜県郷土工芸品に指定されています。

• 渋草焼

  渋草焼（しぶくさやき）は、岐阜県高山市渋草で作られている焼き物です。
  1841年、地元の産業振興を図り、渋草に陶磁器の製陶所を築いたことから始まります。
  陶磁器生産の本場である瀬戸や九谷から陶工や絵師を招き、「飛騨九谷」、「飛騨赤絵」という独自の作品が生まれました。
  幕末には江戸幕府の崩壊により衰退の一途を辿りますが、明治期の1878年に再興を果たします。
  「芳国社」の名で各国の万国博覧会などにも出品し、多くの功績を残してきた渋草焼は、1992年に小糸焼と同じく岐阜県郷土工芸品に指定されています。

• 荒川豊蔵

  荒川豊蔵は、1955年、美濃焼の一種である志野と瀬戸黒の人間国宝として認定された陶芸家です。
  志野や織部は瀬戸で焼かれていたとする定説に疑問を抱き、古窯跡の発掘調査を通してそれらが美濃で焼かれたことを発見し、以来自身の手で美濃古陶を復元することに努めました。
  研究や作陶を重ねて古志野を再現した彼の作品は、「荒川志野」と称されるほどの独自性を確立し、美濃焼の代表作となっています。

• 加藤孝造

  加藤孝造は美濃焼の陶芸家で、美濃桃山陶の一つである瀬戸黒の技法において、2010年に人間国宝として認定されました。
  荒川豊蔵に師事して技術を受け継ぎ、志野や瀬戸黒など多くの作品を生み出し、数々の賞を受賞した功績があります。
  また、作陶だけでなく、社団法人美濃陶芸協会で理事や会長、名誉顧問を務めるなど、美濃焼の発展に貢献しました。

• 鈴木藏（すずきおさむ）は、美濃焼の志野の技法保持者として、1994年に人間国宝となった陶芸家です。
  父が釉薬の研究者であり、釉薬や陶土について学んだ後、志野と瀬戸黒の人間国宝に認定された荒川豊蔵、色絵磁器の人間国宝に認定された加藤土師萌（かとうはじめ）の2人に師事して志野の技法を継承しました。
  伝統的な志野の作品のみならず、釉薬を使った独自性のある作品を生み出し、多くの賞を受賞しています。
  また、現代のガス窯を使った技法で、志野の良さを損なわせない、安定した焼き上がりの実現にも成功しました。